SECRET STORY01
ライダー目線の開発現場で起きたこと
多くのライダーがツーリングへ出かけるのが春から夏、秋にかけての季節。しかし近年の夏場は気温が異常に高くなることも多く、ヘルメットやライディングウエアを着用するライダーには非常に過酷な環境となる。
そんな中、少しでも快適に走ることができないか?アールエスタイチの開発スタッフは、寒い季節に活躍する電熱シリーズe-HEATのように酷暑でもツーリングに出掛けたくなるような製品を長期に渡って模索していた。さまざまなアプローチの結果、ひとつのシステムにたどりついた。任意のタイミングでアンダーウエアに水分を供給し、走行風による気化熱効果でウエア内の温度を下げるというものだ。いわば“ライダーの水冷化”。ありそうでなかったメカニズムだが、その効果は大きかった。
そのテストを繰り返している中でひとつの問題にぶつかった。それは冷却に使う液体についてだ。水は手軽に入手できるが清涼感がもの足りない、生乾きのような臭いも気になる。決して快適とはいえなかったのだ。アールエスタイチはモーターサイクルアクセサリーの物作りに対する知見はあるが、液体に対する知識はほぼない。開発の行き詰まりを感じた。
そこで浮かんだのが液体を得意とする他業界にアプローチすること。候補に上がったのは化粧品メーカーのマンダムだった。
SECRET STORY02
ユーザーを快適にしたいという同じ想いから始まった共同開発
化粧品メーカーであればどこでも良かったわけではない。市販されている清涼グッズなどを吟味していった中で浮かんだのが有名な男性化粧品ブランド「ギャツビー」を有するマンダムだった。
そしてアールエスタイチの開発スタッフである栗栖が持ち込んだ企画にマンダム側も興味を示した。
「最初に共同開発の話を聞いたとき少し困惑しました」とマンダムの山科氏。というのもマンダムの開発スタッフたちはバイクに対する経験や知識が皆無だったから。しかしライダーの現状とアールエスタイチ側の要望を聞くと、マンダムが長年培ってきた清涼感技術や皮膚感覚センサーの研究から生まれた「Kai-tech(快テック)技術」を応用できるのではないかと感じたという。
しかし開発は容易ではなかった。なぜならマンダムには過去にそのような過酷環境で使うという製品が存在しなかったからだ。アールエスタイチとの綿密なやり取りの中から、想像以上に走行中のライダーは酷暑で不快であることがわかった。そこで、ライダー走行中の過酷な環境の再現をするところから開発は始まった。この過酷状態でどうやって心地よく快適に使用できるか、まずは既存製品の処方をベースに試行錯誤を重ねた。清涼成分の種類や比率を高めると清涼感は向上するが、同時に痛みを伴う不快な刺激が生じることも。また、このような酷暑環境下では液がすぐに気化してしまい清涼感が続かなくなるという課題も生じた。そこでメントールによる不快刺激を緩和し、走行風による心地よい爽快感を長時間持続させるマンダム独自技術「Kai-tech Air技術」を応用したのだ。
「配合する消臭成分は天然由来にこだわりました」と齋藤氏。マンダム独自のKai tech Air技術に加え、ライダーたちの夏場の不快要素の一つである汗臭い衣類のニオイを解消するため、メイド・イン・ジャパンをイメージさせる“緑茶”と“柿”2つの消臭成分を配合。こうして、長時間持続して快適な清涼感が得られつつ消臭効果が高いライダーのためだけに開発された液体「LIQUIDWIND WATER」を完成させたのだ。
SECRET STORY03
炎天下のテストで盲点発覚。それぞれの得意分野でカバー
完成したLIQUIDWIND WATERを使ってアールエスタイチの開発スタッフが継続して路上テストを行っていた。すると想定外の問題が発生した。猛暑日になってくると腰のボトルに入っているLIQUIDWIND WATERが直射日光の熱やアスファルトからの照り返しなどによって体温以上に加熱されてしまったのだ。熱せられた液体がアンダーウエアに送り込まれると体に触れた瞬間に不快な違和感となる。その現象にはボトルの形状や位置、収納ポーチの断熱性能などを工夫するなどアールエスタイチが得意とする物作りで対応。
またLIQUIDWIND WATERそのものの冷却保管が可能に。詰め替え容器をキャップ式にすることで数回に分けて給水できるようにし、走行中の快適な使用感をとことん追求した。
他にも実走テストからわかったことがある。それは走行風が当たりやすい前側だけではなく背中にもLIQUIDWIND WATERを給水したほうが快適だということ。それにあわせてアンダーウエアや送水パイプのレイアウトなどを決定。液体と給水システムを並行して開発することでより効率が良いクーリングシステムを構築することができたのだ。
ライダーの悩みのひとつである“猛暑”を快適に走り続けることができる LIQUIDWINDシステム。そこにはライダーの立場になってモーターサイクル用品をつくり続けてきたアールエスタイチと、男性化粧品で存在感を放つマンダムが持つ数多くのノウハウが凝縮されているのだ。